人生ラクに生きようよ

備忘録的に。

認めたくない、これが岩井俊二作品だなんて 『ラストレター』

突然ですが、私は岩井俊二監督が好きなんですね。

一番好きなのは『花とアリス』で、『花とアリス殺人事件』も良かったし、最近だと『リップヴァンウィンクルの花嫁』も良かった。

あまり多作な監督ではないだけに、新作『ラストレター』公開の一報を聞いた時はめちゃくちゃワクワクしていたんですよね。

 

…ポスターを見るまでは。

 

 

 

 

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なんですか? この『THE有頂天ホテル』みたいなポスター。

 

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(ちなみに、『THE有頂天ホテル』は大好きな映画ですよ)

 

極め付けに、企画・プロデューサーが川村元気氏であると聞いて、ひしひしと嫌な予感に襲われながら鑑賞したのですが、、まあ大概そういう嫌な予感は当たるものです。

そもそも、岩井俊二監督に対して、企画・プロデューサーって必要なんですかね? そのあたりがどうもよくわからないんですけれども。

 

広瀬すずと森七菜は姉妹。森七菜は大人になると松たか子になる。広瀬すずの娘は広瀬すずで、松たか子の娘は森七菜。

荒唐無稽なことを言っているようですが、事実です。初見ではこの人間相関図が意外にわかりづらいので注意。

主演は松たか子で、その娘を演じているのが森七菜です。松たか子の姉の娘を演じているのは広瀬すずです。

回想シーンでは、松たか子の高校生時代を森七菜が演じています。松たか子の姉の高校時代は広瀬すずが演じています。この理屈でいうと、松たか子の姉の大人になった姿を別の人が演じなくてはいけないのですが、冒頭ですでに故人となっており、遺影でしか登場しません。若い頃の写真しかなかった、という理由で、広瀬すずの写真が使われています。

 

このあたりの設定とキャスティングには岩井俊二監督らしさがあって、まあまあ、ありそうでない面白さがあるのかなと思えるのですが、ここに福山雅治(回想シーンでは神木隆之介)が絡んできて物語が動き出すと、一気に面白くなくなる…。

福山雅治は、高校生時代に広瀬すずに恋をしていて、大学生時代にはお付き合いもしていたものの、結局逃げられてしまう。広瀬すずの名前をタイトルにした小説を書いてデビューするものの、その後は一作も書けずに、同窓会で出会った松たか子広瀬すずと勘違いし(実際は別人とわかっていたけれども)、文通をはじめる…。

 

このあたりの恋愛模様が、稀代のモテ男・福山雅治を持ってしても残念ながら気持ち悪いんですよね…。彼なりの役者魂なのか、イケメンぶりを封印して情けない男を演じているのが、かえって仇となっているような。いっそ、かっこいい方に振り切ってくれたほうがラブストーリーとして楽しめた気がします。

 

広瀬すずと森七菜は手放しですごい

全体的に残念な映画なのですが、広瀬すずと森七菜という二人の女優の才能だけは存分に楽しめます。広瀬すずは年齢的にも高校生(しかも二人分)を演じるのは結構きつかったはずですが、全く違和感ないです。ちなみに回想シーンのロングヘアより、現代のボブの方がしっくりきてましたが、ボブの方がウィッグだったらしい。

この映画の後、事務所の移籍騒動やゴリ押しやらでネガティブイメージがついてしまった森七菜ですが、広瀬すずを食っちゃってるんじゃないかという名演を見せています。これは岩井俊二監督も手放したくないだろうなという感じ。回想シーンで、姉(広瀬すず)のことが好きだとわかっている神木隆之介に、自分が書いたラブレターを渡すシーンがあるのですが、この時の彼女の演技は一見の価値があります。

 

小ホメシーンは色々あるけど

何やかんやと書きましたが、小ホメしたくなるシーンは色々あるんですよね。庵野秀明が演じる旦那は妙にリアルだし、広瀬すずと森七菜がボルゾイを散歩させたり布団並べたりする様子は、さすが女の子を撮るのが上手い岩井俊二だなって感じはするし。『Love Letter』ファンへのサービスなのか、豊川悦司中山美穂が登場するのも悪くなかったと思います。

でもね、やっぱりこれを岩井俊二監督作品って認めたくないんですよね。滅茶苦茶身勝手なこと言ってる自覚はあるんですけども。

ついでに言うと、主演の松たか子があんまり魅力的に見えなかったのが残念でした。岩井俊二監督なら、もっと彼女を可愛く撮れたと思う。うーん、かえすがえすも残念な映画。

 

ただただ気持ち悪い。『SNS 少女たちの10日間』

チェコのドキュメンタリーです。

成人女性が、12歳の少女のふりをしてSNSに登録するとどうなるか? 3人の女性が体を張って検証を行なっています。

 

年齢差は気にしないよ!

この映画を観る人たちは、ある程度の地獄が広がっているだろうと心づもりをしているとは思うのですが、はっきり言って、想像以上の地獄タイムが繰り広げられています。

12歳(という設定)の少女に対し、卑猥な発言をするのみならず、局部を見せつけたり裸の写真を要求したりするやりとりが延々と続くんデスヨ…さすがに「もうええわ」と言いたくなってしまいました。

 

全く笑えない惨状なんですが、正直クスッとしてしまったのが、関係を求めるオッサンに対し「私は12歳なのにそんなことしていいの」と少女が言うと、みんな口を揃えて「年齢差は気にしないよ!」と返すこと。違うだろ!

 

さすがに大事なところはモザイクがかかっているんですが、普通に気持ち悪いので、トラウマがある人、潔癖な人にはおすすめしない映画です。

 

この人たちはロリコンではありません

映画の中で明らかにされているのですが、この映画に出てくるオッサンたちは、いわゆるロリコンではない人がほとんどのようです。つまり、成人女性に対してできないことを少女相手にやってるってことですね。

難しいなーと思ったのが、相手が12歳だってこと。12歳の女の子って大人が思う以上にマセてるので、エッチなことにも興味があるし、親に隠し事もする。だけどやっぱり子どもなので、オッサンたちの異常さには気づかないんですよね。

オッサンたちはそういう女の子たちの特性もわかってターゲットにしてるのだと思います。相当卑劣ですよね。

 

必要なのは治療?刑罰?規制?

このドキュメンタリーでの調査で得られたデータはチェコ警察に提供されたようで、実際に捜査につながった例もあるようです。でも実際、このオッサンたちは大した罪には問われないだろうし、また同じことを繰り返すのでは? としか思えない。

そうなってくると実際何が必要になってくるんでしょう。医療による治療なのか、厳しい刑罰なのか、それともSNSを規制すればよいのか…

このドキュメンタリーでは、そのソリューションは示されてません。強いて言えば啓発というか、娘さんがターゲットになる可能性があるので気をつけてね、というような親への啓発にとどまっている気がします。

でもね、前述の通り12歳の女の子は大人なので…親が厳しくすればするほど抜け道を探すので注意ですよ。

 

邦題以外はイケてる映画『しあわせな人生の選択』

いきなりですが、『しあわせな人生の選択』という邦題はイケてないなーと思います。何回聞いても覚えられないし、似たようなタイトルの映画いくらでもありそうだし。

でも映画自体はイケてます。

末期がんで余命幾ばくかながら、治療をやめることを決意したスペインの男と愛犬、カナダから彼を訪ねてきた親友の男のお話です。

原題は「Truman」。愛犬の名前です。

 

自分が死んだら犬はどうする?

余命宣告された主人公とその親友が過ごす4日間が、淡々とユーモラスに描かれた映画です。

主人公はせっせと終活を進めているのですが、そのメインは愛犬の譲り先を見つけることなんですよね。

この様子がなかなか面白くて、獣医に「飼い主がいなくなると犬も喪失感を感じるのか?」「自分の匂いがついたものを持たせたほうがいいのか?」と質問攻めにしていたりしてなかなかの犬バカぶり。

そこまで溺愛している愛犬を、最終的にどうしたのか? ぜひラストまで見届けてほしい映画です。

 

親友が「治療をやめる」と言ったらどうする?

尊厳死」という言葉もありますが、がん治療における「治療のやめ時」は難しい問題だと思います。

余命宣告されて治る見込みがない状態で、辛い治療をいつまで続けるのか? 本人でさえ答えが出ない問題でありながら、周りの人は各々の立場でまた違う思いを抱くでしょうし。

治療をやめてすっかり吹っ切れている(ように見える)主人公と、治療を再開してほしいと説得する親友、元妻と息子、犬の引き取り手を探して出会ったなんの事情も知らない人々・・・さまざまな人々の様子が淡々と描かれていきます。

親友の死を受け入れられない男は主人公に対し、なんとか治療を再開してくれないか、と説得にかかるわけですが、「お前はつい数日前からそのことを考えただけだろ? 俺はこれまでずっと考え続けてきたんだ」というようなことを言われて何も言えなくなってしまうんですよね。

自分の葬式の手配をし、愛犬の引き取り手を探し、息子に別れを告げようとする親友の様子を見て、果たして冷静でいられるのか?

親友の視点で描かれた映画ってあまりなかったなと思います。

テーマとしてはありふれていますが、そういう意味では新鮮な映画です。

 

ヨーロッパ行きてえ

主人公が暮らすスペインの街並みだけではなく、息子が住んでいるアムステルダムの風景も味わうことができるヨーロッパ映画です。

この写し方が良くて、この監督のロードムービーも見てみたいなーと思いました。

観終わると無性にヨーロッパに行きたくなります…行きてえ…

邦画史に残る名作 すべてが"ほどよい"『Shall We ダンス?』

1966年に公開された邦画『Shall we ダンス?』。

のちに夫婦となる、周防正行監督と草刈民代の出会いとなった作品です。

リチャード・ギア主演によるハリウッド版も製作された、邦画史に残る名作です。個人的にはジブリ映画並みの頻度で金曜ロードショーに取り上げられてもいい作品だと思ってます。

 

脚本の教科書に載るレベルの完璧なシノプシス

ダンス教師役で出演している草刈民代は、今でこそ女優として活躍していますが、当時はいちバレエリーナ。モデルとして広告等で活躍こそしていたものの、演技経験は全くなかったようです。そんな彼女ですが、監督が提示したこの映画のシノプシスを読んで素直に感動し、自分にもできるかも、と思って出演を決めたとのこと。

確かにこの映画のシノプシス、色々な意味で完璧だなーと思うんです。

 

起:

 しがないサラリーマン(役所広司)が、社交ダンス教室の窓辺にたたずむダンス講師(草刈民代)を見て一目惚れ。家族には内緒で社交ダンスを習い始める。

承:

 仲間にも恵まれ、不器用ながらも社交ダンスにだんだんのめり込んでいくが、妻は夫の帰りが遅くなったことで浮気を疑い、探偵を雇って調査。夫が社交ダンスを習っていることを知る。

転:

 ついに大会に出場! 順調に踊っていたものの、こっそり観客として来ていた妻と娘に気づいてうろたえ、パートナー(渡辺えり)のドレスの裾を踏んでしまい大惨事に。すっかり意気消沈し、社交ダンスをやめてしまう。

結:

 心配した教室の仲間たちが家を訪ねてきて、ダンス講師(草刈民代)が海外へ渡ってしまうこと、お別れパーティーに来てほしいことを告げる。合わせる顔がないと断りつつも、ダンス講師からの手紙や家族の声にも励まされ、気づけば会場へ足が向いていた。ダンス講師から「Shall We Dance?」と声をかけられ、エンド。

 

端折りまくりましたがこんな感じです。なんでしょうね、この収まりの良さ。

わかりやすく、多少のアップダウンがあり、最後はハッピーエンド。解説ブログを読まないとよくわからない映画が溢れている昨今、この収まりの良さはかえって新鮮に思えるはず。

  

"ほどよい"コメディ、”ほどよい”シリアス、”ほどよい”ラブストーリー

もう一つ、この映画の良いところはすべてが"ほどよい"ことだと思うんです。

基本的にはコメディで、ダンスを習い始めたばかりの役所広司、アクの強いダンス仲間の竹中直人、ドレスの裾を踏まれる渡辺えりなど笑えるシーンは満載なのですが、どれも”ほどよい”具合になってます。行き過ぎで滑ってる、ってことがない。某福●雄一監督は見習ってほしい。

草刈民代演じるダンス講師の過去、浮気を疑う妻など、若干のシリアスパートも"ほどよい"。心を乱されずに穏やかに観れます。登場人物はなんだかんだ、みんないい人。

ダンス教室の窓辺にたたずむ草刈民代を見つめる役所広司のシーンが有名なので、この映画を「役所広司草刈民代のラブストーリー」と思っている人も多いようですが、この要素もほんとに"ほどよい"具合です。そもそもこの二人はペアを組まないんですよね。だからこそ、ラストシーンの「Shall We Dance?」が際立つのですが。

 

オスカーをとれたかもしれない映画

この映画はアカデミー賞外国語映画賞の日本代表には選ばれておらず、アカデミー賞には名乗りを上げていないのですが、ノミネートされていたらどうなっていたんでしょうね。のちにハリウッドでリメイクされているくらいですし、いい線行ったんじゃないかなーと思うのですが…。

日本国内だけでも語り継がれてほしいなーと思う映画ですね。令和の時代に見ると、主人公はちょっとステレオタイプすぎるサラリーマンかな、と思えなくもないですが、役所広司がスタイリッシュなのでセーフです。

未見の人は、ぜひご視聴あれ。

 

 

草刈民代のエッセイ。アメリカのバイヤーがこの映画を買い付けに来た時のエピソードや、ハリウッド版のリメイクを観た時の話、周防監督との結婚式のエピソードなど。

 
 

日本中から叩かれた人の生き様その1『小保方晴子日記』

小保方晴子さんを覚えていますか。

「リケジョの星」として一躍時の人となり、まもなくして論文不正が発覚、日本中から大バッシングを受けた女性です。

そんな彼女、2つの著作を持つ文筆家でもあります。一作目の手記、『あの日』はベストセラーとなりました。 

かなり主観的な内容で(手記というのは概してそういうものかもしれないが)、新たな事実は何も浮かび上がらず、決して世間の評判は良いものとは言えませんでした。

 

そこで個人的におすすめしたいのは、二作目の『小保方晴子日記』。

たかが”日記”と侮ることなかれ。日本中からバッシングされた一人の女性が一体どのように生きていたのか、克明に記された資料として一読の価値があります。

 

あの日あの時小保方さんはどこで何をしていたのか(神戸〜温泉旅館〜入院〜引越し〜京都)

 

タイトルの通り、「小保方晴子さんの日記」以上でも以下でもないという内容の本なのですが、時系列的には『STAP細胞はありまぁす会見』の後、一体小保方さんはどこで何をしていたのか、ということが記されています。

 

Wikipediaにも書かれているように、その後小保方さんは理化学研究所を退職し、早稲田の博士論文を再提出するも学位取り消しとなって絶望し、手記を書いて出版し、ホームページを立ち上げ、瀬戸内寂聴と対談します。これら一連の出来事を、神戸の自宅から温泉旅館、病院、親友さんが見つけてくれた物件、とロケーションを変えつつ、文字通り死に物狂いでこなしていく様子が描かれています。

 

日本中からあれだけバッシングされたら、いっそ海外に行ってしまった方がラクなのでは、と思わずにはいられませんが、小保方さんはずっと日本で過ごしていたということがわかります。温泉旅館のスタッフから「あなた綺麗ね。幸せになってね」「僕が生きてるうちにまたきてね」などと意味深な言葉をかけられている小保方さん。室内でもマスクを外せない状況だったという彼女、当然偽名で宿泊していたのでしょうが、仲居さんや社長さんはその正体に気づいていたのかもしれません。

 

名前についても触れられており、名乗るのが怖くて物件やインターネットの解約がままならず、保険証を出すのも怖くて自由診療の歯医者を探す様子が描かれる中、「小保方晴子の存在を私まで否定したくない」と、改名を拒んでいます。改名した方が生きやすくなりそうなのになあ、と安直に思う一方で、「私は何も悪いことをしていないのに」という当人の気持ちはわからなくもない。それにしても、お姉さんから「名前がバッチリ書かれたものをそのまま捨てないでよ」と叱られるシーンは切ないです。

 

気まぐれ先生、梨狩りさん、親友さん、デル先生、ベロニカさん、原宿ロールさん

 

小保方さん以外の人物のうち、実名があげられているのは弁護士と寂聴さんくらいで、その他の人物は彼女がつけたニックネームで登場します(決してムーミン谷の仲間達の名前ではありません)。そのネーミングセンスはかなり独特で、うっすらと狂気すら感じます。

 

特筆すべきは「親友さん」で、性別がわからないように描写されていることから、恋人なのでは?とも思える人物です。物理的にも精神的にも、肉親以上に小保方さんを支えている存在。小保方さんは、二人のお姉さんや姪っ子甥っ子とは頻繁に会っていますが、両親とは会っていないと綴っています。ご両親との関係性はわかりませんが(関係が破綻しているわけではなさそう)、実家に帰るという選択を避けた小保方さんのことを支えた「親友さん」の存在がやけに気になるとともに、この人がいてくれてよかったなあと他人事ながら思ってしまいました。 

 

小保方さんの罪と罰とは

 

あれだけのバッシングを受けて果たしてメンタルは崩壊しないのか、というのは誰もが疑問に思うことですが、小保方さんは常時精神科に通い、服薬をし、時には入院もしています。「鬱とPTSD」との診断を受けているシーンもあります。

 

全体を通して食にまつわる描写も多く、全く食べられずに激痩せしたり、お菓子やパンを大量生産したり、満腹なのに苦しくなるまで食べ続けたり、と明らかに精神が安定していない様子が見て取れ、読んでいて苦しくなる描写もあります。

 

読み終わった後、「そういえば小保方さんって何をやらかした人なんだったっけ?」と誰もが一度は思うのでは? この日記に描かれた境遇が彼女への罰だとするのなら、彼女が犯した罪とはいったい何だったのか…?

 

終盤、出版社に勧められるがままに小説を書きながら、支援者と思しき人を頼って京都へ向かう決意を固めたところで、この日記は終わります。その後の彼女の境遇は週刊誌にスクープされたこともありご存知の方も多いと思いますが、どうやら研究とも文筆とも縁のない世界で、幸せに暮らしているようです。

きっと暗闇の中にいた時の彼女の生きるよすがであったであろうこの日記が、彼女の意思によって絶版になる日も近いのかもしれないなあと、幸せそうな彼女の姿を見てぼんやり思いました。

 

レオとブラピが揃えば史実だって変えられる『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

2019年のハリウッド映画。

監督はクエンティン・タランティーノレオナルド・ディカプリオブラッド・ピットが共演するスター映画です。

本作でブラッド・ピットは、俳優としては初のオスカーを手にしました。

 

 

 

タランティーノシャロン・テート事件を調理するラスト13分

この映画を観る前に、シャロン・テート殺害事件のことは知っておきましょう。知らずに観た人、自分では知らないだけで相当損してます。

簡単に言うと、シャロン・テートという女優が、ロマン・ポランスキーという映画監督と結婚し、ベイビーを妊娠して幸せの絶頂にいる最中、自宅でカルト集団に襲われて殺されたという実在の事件です。まあ残忍すぎますね。

この実在の事件を、タランティーノ監督がどう調理するのか? というのがこの映画の最大のテーマになっています。マーゴット・ロビー演じるシャロン・テートは序盤から登場するので、観客は「あーこの人殺されるやん」と思いながらそのナイスバディを2時間近く見続けることになるわけです。

 

「ラスト13分」というのが宣伝時には強調されていたわけですが…こういうのって大抵期待外れで終わるんですが、この映画の「ラスト13分」は一見の価値ありですよ。ラストにかかるMiss Lily Langtryもまた、至高です。長い映画なんで途中ウトウトするかもしれませんが、是非ラストまで観て欲しいですね。

 

ちなみに、スパーン映画牧場でブラピ演じるクリフがカルト集団と対面するシーンがあるのですが、それまでの陽気なハリウッドの雰囲気から一転、こいつらの生気のなさったるや、ヤバいです。こちらも一見の価値あり。

 

肩の力の抜けたレオ✖︎人生のどん底から這い上がったブラピ

 

エンタメの多様化が進む昨今、日本における、いわゆる「洋画」「ハリウッド映画」の人気はだだ下がりしてますよね。

”名前と顔が一致するハリウッドスター”を挙げろと言われたら、いまだにレオナルド・ディカプリオブラッド・ピットの名前は上位にランクインするのでは?

本作は、そんな二人が初めてタッグを組んだ映画です。面白くないわけない。

 

ちなみに、公開の2019年時点でレオは45歳、ブラピは56歳。立派にイケオジになってます。

タイタニックで一躍セックスシンボルとなったレオは、オスカーがなかなか獲れずに引退するする詐欺を繰り返し、なるべくイケメンからかけ離れた役を選びがちになり、環境保護運動に明け暮れ、独身を貫き若いモデルと交際しまくった結果、2015年にようやくオスカーをゲット。

一方のブラピは、プロデュースした映画がオスカーを獲り裏方としての才能を発揮、アンジーと子どもたちに囲まれて幸せな生活を送っているーーと誰もが思っていたところ、まさかのドロ沼離婚。アルコール依存との壮絶な闘いを強いられました。

オスカーを手にして肩の力が抜けたレオと、人生のどん底から這い上がったブラピ。

観終わった後、「歳をとるのも悪くないよね」と思いました。二人の山あり谷ありの人生経験が、リック・ダルトンとクリフ・ブースというキャラクターの人生とシンクロして、なんとも言えない化学反応を起こしてます。そりゃ史実だって変わるわ。

 

ハリウッドさん、ポリコレばっか気にしてないでさ

この映画は、タランティーノ監督からハリウッドへの”ラブレター”だと言われています。当時の街並みを再現したセット、懐かしい音楽、そしてレオとブラピというハリウッドが誇るスターの共演。

そして、正直、最近のハリウッドって、こういうスターがいないなあ〜と思わされます。二人ともめちゃくちゃカッコいいし、演技も至高。

ポリコレばかりが話題になる最近のハリウッドにうんざりしている人におすすめです。