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備忘録的に。

邦画史に残る名作 すべてが"ほどよい"『Shall We ダンス?』

1966年に公開された邦画『Shall we ダンス?』。

のちに夫婦となる、周防正行監督と草刈民代の出会いとなった作品です。

リチャード・ギア主演によるハリウッド版も製作された、邦画史に残る名作です。個人的にはジブリ映画並みの頻度で金曜ロードショーに取り上げられてもいい作品だと思ってます。

 

脚本の教科書に載るレベルの完璧なシノプシス

ダンス教師役で出演している草刈民代は、今でこそ女優として活躍していますが、当時はいちバレエリーナ。モデルとして広告等で活躍こそしていたものの、演技経験は全くなかったようです。そんな彼女ですが、監督が提示したこの映画のシノプシスを読んで素直に感動し、自分にもできるかも、と思って出演を決めたとのこと。

確かにこの映画のシノプシス、色々な意味で完璧だなーと思うんです。

 

起:

 しがないサラリーマン(役所広司)が、社交ダンス教室の窓辺にたたずむダンス講師(草刈民代)を見て一目惚れ。家族には内緒で社交ダンスを習い始める。

承:

 仲間にも恵まれ、不器用ながらも社交ダンスにだんだんのめり込んでいくが、妻は夫の帰りが遅くなったことで浮気を疑い、探偵を雇って調査。夫が社交ダンスを習っていることを知る。

転:

 ついに大会に出場! 順調に踊っていたものの、こっそり観客として来ていた妻と娘に気づいてうろたえ、パートナー(渡辺えり)のドレスの裾を踏んでしまい大惨事に。すっかり意気消沈し、社交ダンスをやめてしまう。

結:

 心配した教室の仲間たちが家を訪ねてきて、ダンス講師(草刈民代)が海外へ渡ってしまうこと、お別れパーティーに来てほしいことを告げる。合わせる顔がないと断りつつも、ダンス講師からの手紙や家族の声にも励まされ、気づけば会場へ足が向いていた。ダンス講師から「Shall We Dance?」と声をかけられ、エンド。

 

端折りまくりましたがこんな感じです。なんでしょうね、この収まりの良さ。

わかりやすく、多少のアップダウンがあり、最後はハッピーエンド。解説ブログを読まないとよくわからない映画が溢れている昨今、この収まりの良さはかえって新鮮に思えるはず。

  

"ほどよい"コメディ、”ほどよい”シリアス、”ほどよい”ラブストーリー

もう一つ、この映画の良いところはすべてが"ほどよい"ことだと思うんです。

基本的にはコメディで、ダンスを習い始めたばかりの役所広司、アクの強いダンス仲間の竹中直人、ドレスの裾を踏まれる渡辺えりなど笑えるシーンは満載なのですが、どれも”ほどよい”具合になってます。行き過ぎで滑ってる、ってことがない。某福●雄一監督は見習ってほしい。

草刈民代演じるダンス講師の過去、浮気を疑う妻など、若干のシリアスパートも"ほどよい"。心を乱されずに穏やかに観れます。登場人物はなんだかんだ、みんないい人。

ダンス教室の窓辺にたたずむ草刈民代を見つめる役所広司のシーンが有名なので、この映画を「役所広司草刈民代のラブストーリー」と思っている人も多いようですが、この要素もほんとに"ほどよい"具合です。そもそもこの二人はペアを組まないんですよね。だからこそ、ラストシーンの「Shall We Dance?」が際立つのですが。

 

オスカーをとれたかもしれない映画

この映画はアカデミー賞外国語映画賞の日本代表には選ばれておらず、アカデミー賞には名乗りを上げていないのですが、ノミネートされていたらどうなっていたんでしょうね。のちにハリウッドでリメイクされているくらいですし、いい線行ったんじゃないかなーと思うのですが…。

日本国内だけでも語り継がれてほしいなーと思う映画ですね。令和の時代に見ると、主人公はちょっとステレオタイプすぎるサラリーマンかな、と思えなくもないですが、役所広司がスタイリッシュなのでセーフです。

未見の人は、ぜひご視聴あれ。

 

 

草刈民代のエッセイ。アメリカのバイヤーがこの映画を買い付けに来た時のエピソードや、ハリウッド版のリメイクを観た時の話、周防監督との結婚式のエピソードなど。