邦題以外はイケてる映画『しあわせな人生の選択』
いきなりですが、『しあわせな人生の選択』という邦題はイケてないなーと思います。何回聞いても覚えられないし、似たようなタイトルの映画いくらでもありそうだし。
でも映画自体はイケてます。
末期がんで余命幾ばくかながら、治療をやめることを決意したスペインの男と愛犬、カナダから彼を訪ねてきた親友の男のお話です。
原題は「Truman」。愛犬の名前です。
自分が死んだら犬はどうする?
余命宣告された主人公とその親友が過ごす4日間が、淡々とユーモラスに描かれた映画です。
主人公はせっせと終活を進めているのですが、そのメインは愛犬の譲り先を見つけることなんですよね。
この様子がなかなか面白くて、獣医に「飼い主がいなくなると犬も喪失感を感じるのか?」「自分の匂いがついたものを持たせたほうがいいのか?」と質問攻めにしていたりしてなかなかの犬バカぶり。
そこまで溺愛している愛犬を、最終的にどうしたのか? ぜひラストまで見届けてほしい映画です。
親友が「治療をやめる」と言ったらどうする?
「尊厳死」という言葉もありますが、がん治療における「治療のやめ時」は難しい問題だと思います。
余命宣告されて治る見込みがない状態で、辛い治療をいつまで続けるのか? 本人でさえ答えが出ない問題でありながら、周りの人は各々の立場でまた違う思いを抱くでしょうし。
治療をやめてすっかり吹っ切れている(ように見える)主人公と、治療を再開してほしいと説得する親友、元妻と息子、犬の引き取り手を探して出会ったなんの事情も知らない人々・・・さまざまな人々の様子が淡々と描かれていきます。
親友の死を受け入れられない男は主人公に対し、なんとか治療を再開してくれないか、と説得にかかるわけですが、「お前はつい数日前からそのことを考えただけだろ? 俺はこれまでずっと考え続けてきたんだ」というようなことを言われて何も言えなくなってしまうんですよね。
自分の葬式の手配をし、愛犬の引き取り手を探し、息子に別れを告げようとする親友の様子を見て、果たして冷静でいられるのか?
親友の視点で描かれた映画ってあまりなかったなと思います。
テーマとしてはありふれていますが、そういう意味では新鮮な映画です。
ヨーロッパ行きてえ
主人公が暮らすスペインの街並みだけではなく、息子が住んでいるアムステルダムの風景も味わうことができるヨーロッパ映画です。
この写し方が良くて、この監督のロードムービーも見てみたいなーと思いました。
観終わると無性にヨーロッパに行きたくなります…行きてえ…