人生ラクに生きようよ

備忘録的に。

認めたくない、これが岩井俊二作品だなんて 『ラストレター』

突然ですが、私は岩井俊二監督が好きなんですね。

一番好きなのは『花とアリス』で、『花とアリス殺人事件』も良かったし、最近だと『リップヴァンウィンクルの花嫁』も良かった。

あまり多作な監督ではないだけに、新作『ラストレター』公開の一報を聞いた時はめちゃくちゃワクワクしていたんですよね。

 

…ポスターを見るまでは。

 

 

 

 

f:id:okuema:20210720212414j:plain

 

 

 

なんですか? この『THE有頂天ホテル』みたいなポスター。

 

f:id:okuema:20210720212708j:plain

(ちなみに、『THE有頂天ホテル』は大好きな映画ですよ)

 

極め付けに、企画・プロデューサーが川村元気氏であると聞いて、ひしひしと嫌な予感に襲われながら鑑賞したのですが、、まあ大概そういう嫌な予感は当たるものです。

そもそも、岩井俊二監督に対して、企画・プロデューサーって必要なんですかね? そのあたりがどうもよくわからないんですけれども。

 

広瀬すずと森七菜は姉妹。森七菜は大人になると松たか子になる。広瀬すずの娘は広瀬すずで、松たか子の娘は森七菜。

荒唐無稽なことを言っているようですが、事実です。初見ではこの人間相関図が意外にわかりづらいので注意。

主演は松たか子で、その娘を演じているのが森七菜です。松たか子の姉の娘を演じているのは広瀬すずです。

回想シーンでは、松たか子の高校生時代を森七菜が演じています。松たか子の姉の高校時代は広瀬すずが演じています。この理屈でいうと、松たか子の姉の大人になった姿を別の人が演じなくてはいけないのですが、冒頭ですでに故人となっており、遺影でしか登場しません。若い頃の写真しかなかった、という理由で、広瀬すずの写真が使われています。

 

このあたりの設定とキャスティングには岩井俊二監督らしさがあって、まあまあ、ありそうでない面白さがあるのかなと思えるのですが、ここに福山雅治(回想シーンでは神木隆之介)が絡んできて物語が動き出すと、一気に面白くなくなる…。

福山雅治は、高校生時代に広瀬すずに恋をしていて、大学生時代にはお付き合いもしていたものの、結局逃げられてしまう。広瀬すずの名前をタイトルにした小説を書いてデビューするものの、その後は一作も書けずに、同窓会で出会った松たか子広瀬すずと勘違いし(実際は別人とわかっていたけれども)、文通をはじめる…。

 

このあたりの恋愛模様が、稀代のモテ男・福山雅治を持ってしても残念ながら気持ち悪いんですよね…。彼なりの役者魂なのか、イケメンぶりを封印して情けない男を演じているのが、かえって仇となっているような。いっそ、かっこいい方に振り切ってくれたほうがラブストーリーとして楽しめた気がします。

 

広瀬すずと森七菜は手放しですごい

全体的に残念な映画なのですが、広瀬すずと森七菜という二人の女優の才能だけは存分に楽しめます。広瀬すずは年齢的にも高校生(しかも二人分)を演じるのは結構きつかったはずですが、全く違和感ないです。ちなみに回想シーンのロングヘアより、現代のボブの方がしっくりきてましたが、ボブの方がウィッグだったらしい。

この映画の後、事務所の移籍騒動やゴリ押しやらでネガティブイメージがついてしまった森七菜ですが、広瀬すずを食っちゃってるんじゃないかという名演を見せています。これは岩井俊二監督も手放したくないだろうなという感じ。回想シーンで、姉(広瀬すず)のことが好きだとわかっている神木隆之介に、自分が書いたラブレターを渡すシーンがあるのですが、この時の彼女の演技は一見の価値があります。

 

小ホメシーンは色々あるけど

何やかんやと書きましたが、小ホメしたくなるシーンは色々あるんですよね。庵野秀明が演じる旦那は妙にリアルだし、広瀬すずと森七菜がボルゾイを散歩させたり布団並べたりする様子は、さすが女の子を撮るのが上手い岩井俊二だなって感じはするし。『Love Letter』ファンへのサービスなのか、豊川悦司中山美穂が登場するのも悪くなかったと思います。

でもね、やっぱりこれを岩井俊二監督作品って認めたくないんですよね。滅茶苦茶身勝手なこと言ってる自覚はあるんですけども。

ついでに言うと、主演の松たか子があんまり魅力的に見えなかったのが残念でした。岩井俊二監督なら、もっと彼女を可愛く撮れたと思う。うーん、かえすがえすも残念な映画。